1.脱税と租税回避について

脱税とは違法不正な手段で納めるべき税金を逃れること。
節税とは法に背かず、法律的な知識などを駆使して、税額を低く抑えること。
租税回避は簡単に言えば、それらの中間的な概念で、完全に違法ではないが、
通常とられることがない手段方法で税額を低くするものを言います。

2.脱税の種類

平成26年5月24日の新聞に「東証上場会社会長が10億円の申告漏れ。」として会長が香港移住したことになっていたが、日本に生活の本拠があったと認定された事件が掲載されました。この件が租税回避であると言われています。
こうした実例で見ると分かり易かもしれません。
外国に居住するものが、外国で得た所得を日本で申告する必要がないことははっきりしているようですね。しかし、単に一時居住しているか、永住か、海外所得かどうかなど、いろいろな問題が生じます。そこで、所得税法などは非永住者が日本で納税する場合どのような所得に関して納税するか、などについて規定を設けています。
本件では、香港に住所を移した会長が、日本の会社から受け取る報酬や配当金については日本に源泉所得税を納めていたが、海外の子会社から受け取る資産等に関しては日本では申告をしていなかった。しかし、実際には頻繁に来日して、香港よりも、日本にいる滞在日数が香港を大幅に上回っていたので、国税局では生活の本拠は日本にあるので、日本で納税すべきであると認定しました。こうした外国移住の形態をとって税を逃れたとみたわけです。しかし、実際に香港に永住しているのであれば、税を逃れたとは言えないので、脱税と節税の境のグレーゾーンとして、租税回避と言われたようです。
最近の事例を見ますと、ひところに比べて、脱税額が少額でも起訴される事案があるように感じます。また災害関連事業関係者、太陽光発電関連業者の脱税も散見されるようです。

脱税の代表的なものは、所得税・法人税・消費税などの脱税ですが、最近は相続税法違反も多く、ほかに関税、石油揮発油税法違反などがあります。 脱税の手口は、多くは売上除外、経費水増し、架空経費計上ですが、単純に申告時に所得額を低く計上する「つまみ申告」や申告自体をしない無申告などがあります。

3.脱税の起訴不起訴の境

一般には逋脱所得、逋脱税額の多寡によって分かれますが、犯行手口の悪性の度合い、常習性、別件との併合なども加味して起訴するかどうかが分かれます。

4.調査・査察・送検の流れ

脱税事件の端緒は雑多で、国税局が他事件の捜査中に発覚することがあれば、内部告発があったり、同種事業者から手口が判明することもあり、所轄税務署の調査から発覚することもあります。その結果、多額脱税が疑われると、査察が入ります。査察が入ると帳簿などの関係書類はすべて押収されることになります。査察内部で調査検討の結果起訴相当事案と判断されると検察庁へ告発されます。脱税が明らかであるのに行為者が否認していたり、罪証隠滅の恐れがあったりすると、逮捕拘留されたりもします。

5.起訴後から判決

地検で捜査の結果、脱税金額等が明確になりますと、起訴され裁判になります。公判審理を経て判決に至るのですが、その間に脱税金額、手口、故意(脱税の意志、事実の認識)計算方法などいろいろな争いがあります。事実を認めていれば、情状立証ですが、最も考慮されるのは納税したかどうかです。

6.判決後について

脱税事件の判決では罰金がつきものです。行為者に関しては体刑(所得税法違反では罰金併科)ですが、法人は当然罰金のみです。自然人の場合は、罰金が払えないときは、1日ついていくら(判決で金額が決まる)と決められた金額に応じて、労役場に留置されます。

7.脱税事件の具体的な内容

脱税事件は、1年間・1事業年度の所得額を計算して、その所得にかかる税額を計算します。そのため、事業規模が大きいと所得計算には手間がかかります。記録が大部であったり、起訴金額が正しいかどうかの検討にも時間がかかるほか、毎年のように改正される税法のチェックなど専門的な知識が必要なので、東京地裁、大阪地裁には租税専門部があります。所得計算は収入、売上、経費などの多数の科目の金額を正確に算出するのですが、全てが記帳されているわけではなく、仕分けが間違っていないかなど調査項目は多岐にわたります。次回はどんな問題が生じるかを見ていきたいと思います。